「あっ……あった」


母親が去って5分、漸く懐かしいお菓子の缶箱が土から姿を現した。


「場所合ってて良かったー」


少し自信無かったんだよね…自分の家の庭でって分かりやすい木とか無いから適当に埋める場所を決めてたから勘で掘ってたし。


「屈む体制も疲れたし、二度手間しなくて良かったー」


まずは一安心。

さて、穴に腕を突っ込む。


「よっこらせ、と」


寂れた缶箱を穴から取り出した。


「うわー、懐かしい。この箱だ、この箱」


懐かしすぎて口角が緩む。

近所のケーキ屋さんで販売されていたクッキーが入っていた赤と白の水玉模様の缶箱。

今はそのケーキ屋さんも潰れ、あの美味しかったクッキーも、この缶箱も手に入ることはできない。


「可愛い模様も年月と土で見る影もないね…」


これを最初に埋めて13年の月日が経ったのだ、当たり前だ。


「あれから10年…か」


抱える様に箱を持ち蓋を開けた。