「涙止まった?」


「うん!止まった!」


「不安は?無くなった?」


「…うん!無くなった!」


あれから暫く祐之介は、涙が止まらない杏を抱きしめながらずっと『大丈夫だよ』、そう何度も耳元で囁いてくれた。


「じゃあ、さっさと片付け終わらそう」


「うん!」


「早くしないと打ち上げ間に合わねぇぞ」


「い、急ごう!」


急いでスコップを洗ったり片付けを済ませる。


「よし、これで完了だな」


「うん!」


「じゃあ、3年後の3月1日一緒に開けよう」


「今度は高校の卒業式の日だね。楽しみだなぁ」


「なぁ、杏」


「ん?」


「これやるよ」

祐之介はネクタイを取って杏の手に渡す。


「え、でも合格発表の時…」


「いいよ、もう。卒業してんだし、それに結果は出てるんだ、制服の着こなしなんてそんなジロジロ見ないだろ。

杏にあげるよ、ネクタイ」


「祐之介…」


「杏が持ってて」


「じゃあ…袖のボタンも頂戴」


「え?ボタン?」


「うん、ボタンを高校でお守りにする」


「…分かった、良いよ」


袖から引っ張ってボタンを引き違って掌に乗せた。

「俺の代わりに杏をよろしくな」


「ふふ、キザ野郎だ」


「何とでも言え」


「じゃあ」


右手を差し出すと、祐之介は微笑んで左手を差し出した。

そして、手を繋ぐ。


「行こうか」


「うん」