男のアホ面を凝視する。
ーー汚物だ。
こいつは人間じゃない。
人間の皮を被ったゴミだ。
心の中で誰かが、そう呟いて
気がつけば
「ーーっ、ぐあっ」
私は男の顔面に
自分の拳をめり込ませていた。
「…何て?」
綺麗に決まったその裏拳は、容易に男の体を傾ける。
「もう一回言ってくれる?」
「いっ、てぇなクソ野郎!!」
「なに?」
「肉便器にしてやるっつってんだろうが」
「…やれるもんなら」
「あ?んだとこのアマ」
男の顔が真っ赤に染まる。
私ももう限界だった。
この男の口から漂う悪臭に
この男の口をつく体たらくな雑言に
良くも悪くも身体が反応する。
良くも“悪くも”。
「そういえば」
「なに」
「聞いたなあ、そういえば」
ーー黒龍にもう一人出入りしてる女がいるらしいって
「金髪で背の高い細身の女」
「…」
「お前のことだなあ?女」



