伝説に散った龍Ⅱ


















ーーゆっくりと倒れていく柚が、私にはスローモーションに見えた。





「柚、柚!」





頭上に振り上げられた鉄パイプ。



背中を向けていて気が付かなかった。



蛇が一匹。



卑しく龍の背後をついた。




































「…、っひゃははははは」



「っ、」





汚い笑い声。



私はその人影向けて身構える。





「…何すんのよ」



「おっ?お前観月の女あ?」



「……違うけど」



「じゃあ何?黒龍の姫、じゃねえなあこいつだもんな近藤の女は」





一般人、というにはいささか目がキマりすぎている。



男の口から漂う独特の匂い。





「…ヤク中」



「あ?」





一言小さく呟けば、
案の定男の耳は見事にそれを拾い上げた。



快楽に任せてソレに嵌れば、体の痛感は麻痺し
反対に一部が酷く敏感になる。



如実に見て取れた。
クスリに手を出した人間の特徴だ。



悪寒が走った。



































「でもよく見れば可愛いな、あんた」



「触らないで」




































ーー苦しい記憶。
私の負の記憶。



その中心にはいつも



クスリと、アイツがいる。





「よぉし」



「…」



「いい提案があるぞ」



「…は?」



「お前が俺の肉便器になる」



「…」



「そしたら命は助けてやるよ」



「…」



「悪くないだろ?」