「烈には繋がった?」
「ううん。繋がんない」
「…ん」
柚がポケットから携帯を取り出す。
どうやら誰かに連絡を試みるらしい。
私はそれをぼーっと眺めながら考えた。
「…伊織」
痛々しい伊織の姿。
とりあえず病院に連れて行きたい。
あくまで変な薬を飲まされていなければ、の話だが。
「…ああ」
後ろで柚の声が鳴る。
どうやら烈はもう電話に出られるみたい。
柚は手早に状況を話して電話を切ると
「今から向かうってよ、アイツら」
背中を向ける私に、そう告げた。
「…何分くらい?」
「30分はかかる」
「…そっか」
「どうする?それ」
『それ』。
伊織をどうするか。
私も今考えていたところだ。
「…考えたんだけど」
「…」
「要は伊織を近藤に会わせないようにすればいいんでしょ?」
「…」
「近藤が来る前に病院に連れてっちゃえば良くない?」
「…」
「どっちみち伊織は怪我してるし、まあ柚もだけど」
「…」
「私が伊織連れてくから、柚はここで奴等のお出迎え。急に病院行くことになったんだ、ってことにする。どう?」
「…」
「聞いてる?」
早口にそうまくし立てた私に、
柚からの返事はなかった。
なにか嫌な予感が脳を蔓延る。
私は恐る恐る振り返って
「……嘘でしょ」
絶句した。



