伝説に散った龍Ⅱ











「悪い、遅くなった」



「いや、いや全然いいけど、」





ぐったりした様子の伊織が、柚から私へと運ばれる。



伊織の制服はあからさまに乱れていた。



柚が応急処置を施したのであろう、不器用ながらもボタンは全て止まっている。








































…こういうのを、私がとやかく言うのも違うんだろうけど。



近藤は、正気を保っていられるだろうか。



今更ながら心配になった。



伊織の体からふんわりと漂う
男物の香水の香り。



何を聞かずとも想像は容易い。



友人の私でさえこんなにも大きな憤りを感じるのに。



伊織の、たった一人の異性である近藤は



私の何倍、大きな憤怒と憎悪を抱くのだろう。





「…芹那」



「…うん」



「爽に会わせるな」



「……うん」





柚もそれを分かっていて。



だから私も頷く。



隠すべきではない。



だけど。
今近藤に明かせばきっと、何かしら壊れてしまうものがある。



ここに来てまだ日の浅い私にも分かった。



私は必死に頭を動かす。