1分、2分、3分──────
刻々と過ぎていく時間の一方で、
私の心熱が、ゾクゾクと震え出しているのを感じる。
不謹慎にも。
彼等の喧騒が、私の奥深くから何かを引っ張り出そうとしてまう。
「…いいなあ」
私も。
私も堂々と、あの中に混ざれたならば。
どんなに、どんなに清々しいだろうか。
ーーそんなことばかり馬鹿みたいに頭を使っていれば
あっという間に、約束の時間が訪れた。
「…柚」
ーー柚、来て。お願い。
その願いは随分と切実だったけれど、そんな私の想いに反して
柚はなかなか姿を現してくれなかった。
「うーん、…どうしよう」
それから数分。
いや、数分を潰している暇もなかったんだけれど。
私は必死に考えた。
この状況を打開する術。
無事に伊織を助け出す術。
そして
柚を傷つけずに、この場を収める術を。
「ーーダメだ、埒開かない」
しかし、どれだけ全力で頭を回しても最適解は見つからない。
そんなこんなで
もうヤケクソに『乱入してやる』と心を決め、一歩を前に出した
その時だった。
「ーー柚、!」
伊織を無造作に担いだ柚が現れたのは。
見るからに身体中ボロボロな柚は、扉を開けると、やっとのことで私を呼んだ。
「芹那、…っ」
いつの間にか
奥の喧騒は消えていた。



