ーー烈が柚に話したことは、ざっとこう。
三時間ほど前。
烈と近藤、伊織に桃、世那の五人は普通にカレー屋に入って、普通にお昼ご飯を食べた。
途中、伊織が御手洗いに席を立ったところをあるチームに狙われた。
ーー『黒蛇』。
比較的新しいチームだという。
近頃この辺りで力をはべらせている、なかなか目につく厄介な奴等なのだそう。
伊織はその、黒蛇の何者かに拉致られたらしい。
厳つい男の背中に括り付けられた伊織が単車と男諸共走り去る場面を、何とか世那が目撃していた。
無論、彼等は救出のために慌てて出動。
しかし、そこでまんまと待っていましたと言わんばかりの蛇たちの出待ちを喰らい
場所は割れているのに助けに向かえないと。
そういう状況。
さらにその、伊織が今いるであろう黒蛇のアジトは
私たち二人からは一キロも離れていないことが判明している。
なのに。
私は連れて行って貰えないらしい。
ーー譲れない。
どうしようもなく、そう思ってしまう。
「柚、今優先すべきことは何?」
「お前を帰す、意地でも」
「違うでしょ伊織の安全でしょ」
「諦めろ芹那」
「無理」
「っ、おい」
「…アンタらがそこまで馬鹿だと思ってない。分かるでしょう、柚」
「…、」
「乗せて」
「、駄目だ」
「いい加減にして」
「駄目だっつったら駄目だ」



