伝説に散った龍Ⅱ













烈と柚の会話が進む。



交わされる言葉が一言増えるたび、
柚の表情には濃ゆく影が落ちているようだった。




























雨足は容赦なく強まっていく。





「ーー芹那」





そんな意地の悪い空模様に
今朝の天気予報を思い出そうと躍起になっていると



烈との通話を終えたらしい柚が私の方に足を向けていた。





「…何があったって?」



「帰るぞ、一旦」



「…え?何もなかったの?」



「…いや。伊織が拉致られたらしい」



「なら帰る意味がないでしょう」



「お前は連れて行けない」





柚の辛そうな表情にハッとした。



私は自分の立場をすっかり
忘れかけてしまっていたことに気がつく。





ーー連れて行けない。





今の私には絶望的な言葉だ。



あの子を助けに行けない。
私は行ってはいけない。



これほど無念なことが、他にあるだろうか。































「駄目だ」



「時間ロス」



「早く乗れ」



「ここから行った方が早いでしょ」