「……お前はどうなんだよ、芹那」
「ん?」
「ここに来たことはお前にとって『そういうこと』か?」
「んー…」
わざと考え込むふりをした。
実際には、
きっといくら考え込んだとて答えは出ないのに。
「そうだね」
柚が私から目を逸らす。
彼らの求める答えが何かは分かってる。
「まだ分かんない。私にも」
「…そっか」
分からない。
ここからいい方に転んでも、悪い方に転んでも。
私は多分黒龍と、そして狼のためにまだ立ち上がると思うから。
二股は出来ない。今はまだ。
不安げに揺れる柚の瞳を捕らえた。
小さな微笑が口をつく。
「楽しいよ」
「…、」
「ここは、とっても暖かい場所ね」
「…ほんとか?」
「うん。嘘は言わない。私」
これが今の私に出来る精一杯の答えだった。
楽しいことに変わりは無い。
柚が笑う。
私もつられて。
頭痛がいつの間にかどこかへ行ってしまったことに気がつく。
「頭治った」
「…えげつないエネルギーだな」
「お腹空いた」
「俺も。なんか食い行く?」
「…うどん」
「OK」



