ーー柚と二人きりになるのは随分、久しぶりのことだった。
「…俺も」
「ん?」
「ありがとな、芹那」
思わずえ、と間抜けな声が漏れる。
驚くほど穏やかな笑みを浮かべる柚は
そんな私を見て、更に頬を緩める。
「なにが?え?」
「こないだ。公園で」
「…ああ、あれ」
「お前が居なきゃ殺してたな」
穏やかな表情のまま物騒な言葉を吐き出した柚に、素直にぎょっとした。
何拍か開けた後、誰のこと、と
下を向いたまま尋ねる。
「…だいたいが。俺が好きになったのはリルハの、根っから無邪気なとこだったんだよな」
『リルハ』。
あの子は今、何をしているんだろうか。
大好きなはずの柚とあんな別れ方をして
初めて会った女(私)に
大好きな人を連れて行かれて。
生きてるのかな。ちゃんと。
「お前とは真逆だった」
「悪かったですね、無邪気じゃなくて」
「そうやってひねくれてるとこ。お前のそういうとこ俺は人間らしくて好きだけど」
「…、」
「俺が何言っても楽しそうなんだ、あいつ」
「…うん」
「人は変わる。良くも悪くも、どっちかに転ぶんだな」
そうだね。
小さく頷いた。
柚は困ったような笑顔を浮かべる。
「…そういうこともあるさ。人生」
私は柚の肩をポンっと叩いた。
何様だよ、と笑う柚が
どこか愛おしかった。



