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「…芹那」
「あ諒二、おかえんなさい」
「帰ったか?あの糞餓鬼は」
「烈のこと?」
「そう」
「帰ったよ。30分くらい前」
ーー上司に挨拶もなしか。あの野郎。
諒二は呆れたように笑った。
「で?世那は?」
「一緒に出てったよ。なんかあるらしい」
「聞かなかったのか?何があるか」
「うん」
「…へえ」
「なに」
ーー正式に黒龍の仲間になることを決めた。一時間前。
それから三人、何だか分からない、覚えてもいないほどくだらない話をして
世那と烈は何か用があるからと出ていった。
私も来るかと言われたが
少し悩んで、いい、と断った。
お風呂に入りたいなと思った。
お腹も空いたなと思った。
ちょっと寝たいな、とも。
そして。
ーー私は諒二の帰りを待っていた。
「可愛くなったもんだな、お前も」
「え、ありがとう」
「違えよ馬鹿」
え?違うの?
力の籠った声で私を睨む諒二。
思わず私も身構える。
私が『黒龍』と関わることを、諒二が望んでいないことは何となく知っていたから。
「足洗ったつもりか?」
「…なに急に」
「…惚けんなよ
分かんないじゃ通用しねえぞ」
「……分かってるよ」
「お前はそんなんで足を洗ったつもりなんですか?って聞いてんだろ答えろよ」
「何が言いたいの」
「…気持ちわりーくらいの未練が」
「…」
「ぜんっぜん払えてないんだわ、お嬢ちゃん」



