「守ってくれるんでしょ?」
今まで、好き勝手やってきた。
ーーこの、うす暗い世界で。
「守られてやるよ」
だから今度は
彼等を見送ろう。
この世界を走り続ける彼等を。
内側から。
きっと、それも悪くないと思う。
「…芹那」
久しく黙っていた世那の情けない声が、私の耳にすべり込む。
「いいのか?本当に」
「承知の上だよ」
「…そっか」
世那は知らない。
自分が出ていったあと、私が何処で、誰と笑っていたのか。
だからこそ世那の口から出る言葉が優しくて
それは、痛いほどに。
「私あんまり悪目立ちはしたくないから、あれはやめてね」
「あれ?」
「集会の時とかにお披露目的な、あれ」
「…ああ、あれ」
「言うこと聞いてあげるから。ね?お願い」
「……ほんっと、がめつい女だなお前は」
「やった〜」
烈の顔から緊張が消えていく。
笑った。
良かった。
これ以上誰かの重りになるのは嫌だな。
そんなことを思いながら。
私は、自分に向け差し出された大きな右手を
「よろしくね、黒龍」
「こちらこそ」
力強く握り返した。



