ーーあの日。
私は黒龍の溜まり場にいて
そこには伊織も近藤も、双子も世那も
そして烈も一緒にいた。
珍しい日だった。
全員が溜まり場にいるなんて。
『お腹空いた…』
きっかけは
私の隣で3DSに夢中になっていた伊織が呟いた一言。
瞬時に、周りが動き出す。
『夜ご飯行こうか、伊織』
近藤が柔らかい口調で伊織の頭を撫で。
『いい?烈』とそのまま
黙って瞼を落とす烈に流れるように訊ねて
烈はそれを『ああ』と二文字で承諾した。
『なに食べたい?』
『インドカレー食べよう!柚と桃は行く?』
『…行くわ、腹減ったし』
『俺も〜』
『世那は?』
『行くっす』
伊織の瞳が私に向いた。
『もちろん芹那ちゃんも、』
『ダメだ』
キラキラと目を輝かせて私を見つめる伊織に、私が断れそうもないのを分かっているのか
烈が食い気味にそれを遮ってしまう。
私は隠されている。
寂しいけど、忘れてはならないこと。
『私のことは気にしないで。ちゃんと待ってるし』
『…でも』
『ほら。ここが一番安全だしね』
『…うん』
『私の安全を守るためにも、ね?』
『…わかった』
一気に沈んでしまった伊織の背中に心を痛めながら
お土産よろしくね、と軽く声を掛けた。
それに応えるように『うん!』と声を張り上げた伊織。
『烈は行かない?』
そうして勢いよく出て行った伊織を追いかけ、扉に手をかけた近藤は、こちらを振り返り
腰をあげない烈に、不思議そうに訊ねた。
『…ああ』
また二文字。
近藤は軽く笑って『そう』と返し
『行ってくるね』と今度は私の方を見た。
『うん。気をつけて』
みんなが出て行く。
私は烈と二人きりになって
時は満ちた。
待っていましたと言わんばかりのスピードで、私は烈の顔を覗き込んだ。
『……っ、なんだ』
『やっぱり』
顔が赤い。
来た時から気づいていた。
『熱あるでしょう』



