伝説に散った龍Ⅱ



















また、



彼らーー『黒龍』の溜まり場は街の外れの港近くにある古びた倉庫で



初代総長の私有物なんだとかいう。
だだっ広いただただ何も無い場所。



彼らはそこに単車を集め、どこから拾ってきたかも分からない家具やらを置いて使っている。



今こそ人一人まともに生活できるような空間が数部屋あるけれど、



先代の人たちが使い始めた頃は酷かったらしく。



現メンバーでは唯一当時を知る烈が
あの無気力真顔の烈が



一度溜まり場の思い出話になったとき



明らかに表情を歪めたので、きっと相当だったんだと思う。






























ーーで、あるからして
普段は滅多に人間も寄り付かない場所。



その場所の傍の道路や、目の前の港を利用するのもせいぜい、この街で職業として漁を行う男たちか、その家族たちか。というような。



…今までも、私が彼らの周りの不良たちから隠されていた自覚はある。



伊織のようにSPのような少年たちが付き纏うわけでもなければ、四六時中幹部の誰かが運転手としてスタンバイしてくれているわけでもなかったし



『溜まり場に来るな』というようなことを仰せつかったことも一度もない。



だから溜まり場のあの倉庫に入っていくのを見られていた
というのも一見不自然ではないように見えるかもしれない、



ーーが。違うのだ。



どこからどう見ても
黒龍のセキュリティに穴はなかった。



備えあれば憂いなし。



溜まり場には私は決まって自分の足で向かっていたし



彼らしか知らぬ裏道を通って。
絶対に正面から入ることはせずに。



更に、学校が終わって、近藤の単車で溜まり場に向かう伊織と私はわざと別れる。



勿論行き先は同じだ。



しかし私だけが一度家に帰って。
身なりを整えて出掛ける。



正直面倒くさい手順だとは思う。
けれど私にもわかっていた。



それが、彼らなりに私の身を守るためのやり方なのだということを。