伝説に散った龍Ⅱ










私とは一日違いの誕生日。



同い年で、それも男の子のくせに。



私にべったりくっついて、離れなかったあの頃とは違う。



…違うんだね。







『今日は収録あるって言ったでしょ』



『は!?聞いてねえよ!』



『ちゃんと聞いてなかったあんたが悪い』



『俺が聞いてないの知ってたんだったら何回も言えよ!』



『はあ?…まあいいけど、とにかく私は今日遊べない。ごめん』








棗との時間や約束を、仕事の都合上断ることも多かった。



それを何度言って聞かせても『嫌だ』と言って聞こうとしなかったあの頃の棗からは



とても、信じられないけど。
















































───変わったね。棗。



そう言って笑えば、棗はそんなことないと苦笑する。



当時私が見てた男にしてはちっちゃい背中も肩幅も



随分見ないうちに、こんなに大きくなって。



きっと声変わりもしたのだろう。
あの頃より何倍も重い低音が身体に響く。













…強いて言うなら、泣き虫なところだけはあまり変わらないみたい。



今もこうして何気なく私のことを担いでいるけれど



…力も、ずっと強くなっているはずだよね。



私のほうが何枚も上手だったあの頃。



でも、今は違う。
























胸を張って『勝てる』と思えない。



今棗と喧嘩をしたとして、棗の全力を



私はあの頃のようにいなすことができるだろうか。



…わからない。



私が弱っていっている間にも
彼等は着々と強くなっていて



私が止まっている間にきっと、彼等は随分長い距離を歩いてきたのだろう。