伝説に散った龍Ⅱ













「別にいいだろ」





捨てなくたって。



馬鹿みたいに小さいミオの声。
それは、先程の私に呼応するよう。



今度は私が無視を決め込んでみると
何を思ったのか、ミオはぴったりと横について走りはじめた。



これでもう聞かざるを得ないな。



本人こそなにも語らなかったが
彼の瞳がそう、私を嘲笑っている。





「なあ」



「うん?」



「また来いよ」



「…うん?」



「だからさ、また来いよ」



「…何処に?」



「決まってんだろ。狼に」





聞いてんのかと私を覗き込むミオ。



聞いている。



ちゃんと聞いてるよ。



いつもと変わらず軽い口調のあんたの言葉は



どうにも私自身の耳が聞き流すことを許さない。





「…何いってんの」





正気だろうか、この男は。



私は目をまるく開けてミオを振り向く。



ケロッとした表情のミオは
そんな私を見てケラケラと笑ったようだった。





「お前が街をまたゼッツーで走れば、俺等は否応無しにお前を思い出す」





おどけたような言い方だけれど
その瞳は困惑するくらいに真っ直ぐ、私を射抜いた。





「お前はそれが駄目だってんだろ?」



「…そう、だから」





だからもう乗らないの。



そう言おうとしたところで、もう一度軽く口を開いたミオが私を遮った。





「でもお前は捨てたくないんだろ?相棒を」



「…それは、」



「そうだよ。俺には分かる」





お前はゼッツーから離れられないんだよな。
何か、外からのアクションが無い限り。



お前自身の手ではどうしても切れない。
そいつとの関係を。





「違うか?」





同意を求めるようなその言葉に、私も無抵抗に小さく頷いた。





「無理に切る必要ねえだろ、そんなの」



「…は?」



「どんだけ頭かてーんだよ、お前」