「ーーミオ、」
滞った空気の中、
それを打ち破る彼への呼びかけ。
「…ん?」
ミオは蒸した煙草を靴の裏に擦りつけると、その綺麗な黒髪を掻き上げた。
艶やかな髪が夜風に靡く。
私の姿が映る薄く褐色がかった双眸は、夜空など比にもならないほど美しかった。
妖しげに緩む口元が、
どうにも魅力的に見えて仕方なかった。
「走り、行こう」
困る。
これ以上、ミオに縋っていたら。
「は?今から?」
ーー私はきっと、此処に帰ってきてしまう
と、そう思った。
それで、瞬間的に口にしていた。
「うん。今から。日が昇るまで一緒に」
『ーー日が昇るまで一緒にいて』
そう言いそうになるのを、慌てて押し込める。



