「っ、」
「ごめんな、セリナ」
その「ごめんな」が
何に向けられたものかは分からない。
けれど。
切なげに私の輪郭をなぞるミオの手つきに、
私は涙をこらえることが出来なかった。
「、ミオ…っ」
「…ん」
「ミオ、」
会いたかった。
そう言いたいのに、やっぱり怖くて。
拒絶されることがただ怖くて。
ミオの温もりに、私はまだ全てを許せない。
「…行くぞ、送ろう」
「…、」
その言葉に、思わず目を見開く。
「…ほんとに誰も呼ばないんだ」
恥ずかしながら
強引にでも引き戻されるのだと思っていた。今の今まで。
棗のように。
ミオも私を引き戻そうとするのだろうと。
雄大くんや仲間たちを呼んで
だから私を追いかけたのだろうと。
しかし、そんな素振り一切見せないミオに
気がついた。
「…や、なんでもないごめん」
ここまで来てミオが誰も呼ばないのはどうしてか。
それは
「…なんでもない」
…私を、連れ戻す気などないから?
ここまで追いかけてきたのがもし彼の武士の情けだとしたら?
だとしたら私のこの考えは間違っているばかりか。
「なんて顔しやがるんだ、お前は」
「…ミ、オ」
間違っている、ばかりか。
もっとずっと、歯切れの悪い
「…なあ、セリナ」
ーーいや。どうだろうか。
気がつけば、心のなかで
自分で自分を否定していた。
「…」
「俺は“狼”がもし、今日終わっても。この先ずっと終わらなくても」
これは多分
「その時が来ればお前を迎えに行くつもりでいた」
間違ってなんか、いない。
「その時は離さないつもりでいた」
私には分かる。
「俺の本心がずっとお前のこと欲してんだから。どうしようもない」
こいつらの性はきっと、ずっと
私ありきで立っていた。



