伝説に散った龍Ⅱ












落ち着いた声音で呼ばれた私の名前。



私はゆっくりと振り向く。



目尻一杯に張った雫を、零さぬように。











「…ミオ」



「…棗のこと殴ったのはお前か?セリナ」



「だったらどうする」



「…だとすれば、お前も大概だな」



「…あんたたちのせいでしょう」














ミオが、その真っ黒な瞳で私を見つめるから。



私は彼をそのまま真っすぐに見つめ返すことしかできない。



聞きたいことがあった。



この男に。



『どうして』と



平手打ちをかましてやりたかった。



















「俺たちのせいか」



「…わかんない」



「なんで殴った」



「関係ないでしょ」











本当はこんなことを言いたいんじゃないのに。



そう思っても、思いとは逆の言葉ばかりが口をつく。





「関係なくねえだろ」



「…どこが」



「お前」



「何よ」



「ちょっと付き合えよ」





また何を言い出すのかと思えば
今度は私に向かって手を伸ばしたミオ。



まるで『掴め』と言わんばかりに。



覗き込んだ表情はいつもどおりで。



掴めない。





「…こっち向け」



「……誰も呼ばないの」



「ああ」





飄々とした背中。



大きい。
前見たときより一層大きい。



嗚呼。





「お前も」



「…なんか言った?」





お前も、変わんないのね。



私を、



あの頃と同じように呼ぶのね。





「セリナ」



「…うん」





私の気も知らないで。