とぼけたようにそう言い捨てた私に、雄大くんは呆けた表情で笑う。
「…帰れよ。今すぐ」
「えーえー、言われなくても」
どうやら見逃してくれるらしい雄大くんにヒラヒラと手を振って、私も退散することにした。
きっと、私にこんなこと思う権利ないんだろうけど
まだ何か、名残惜しくて
ここを、離れることに。
「棗…」
私がさっき放り出してきた棗を心配する雄大くんの声が聞こえる。
背を向けた瞬間、零れたのは
ずっと、どこかで我慢していたはずの感情。
ーー別に見逃さなくたっていいのに。
捕まえて拷問でも報復でもなんでもして。
私だって、気がつけばいいのに。
そんな淡い期待がどこかにあったのかもしれない、と思う。
そんなことは、ありえないのに。



