一つ間を置く。
入り口の扉を開ける頃には、心を決めなくてはならないから。
…口調と声色を変えて。
私はセリナじゃない。
もうあの頃の私じゃない。
そう言い聞かせるように。
深い音を立てて開いた重い扉の向こうへ、真っ黒いフードをかぶって進む。
「…あ?誰だてめえ」
真っ先に私に気がついたらしい、狼六代目副総隊長。
嵐山 雄大。
見知った人だ。
後輩とも先輩とも似つかぬ
しかしそんな私を、実の妹のように可愛がってくれた人。
ーー雄大くん。なんにも変わんないじゃん。
彼の頭を覆い尽くすほどの派手な金色。
鋭い、切れ長の眼。
とんがった耳に、十字架のピアス。
本当にあの頃と何も変わらないままの雄大くんを見ただけで、また涙が零れそうになる。
棗に出会って混乱しすぎたのだろうか。
涙腺が大分緩くなっているみたいだ。
なんて考えながら、そんな自分に失笑する。
「……何がおかしい」
いつになく喧嘩腰の雄大くん。
ーー狼に何かあったのだろうか。
なんて
私には関係の無いことだと意識を連れ戻す。
「…どこのどいつかも知らねえが、それは互い様か?」



