───“冴”
という言葉にこんなにも諒二が反応するのは
彼を拾ってきたのが諒二だったから。
あの夜の責任を一番に感じているのもまた
諒二だから。
私の狼が、壊れた夜を。
憤った様子の諒二。
私は一気に間合いを詰められ、胸ぐらを掴まれ引き寄せられる。
一歩間違えば唇同士がふれあいそうな距離。
にも関わらず諒二の行動に迷いがないのはきっと、
今この時、唇だのキスだのそんなのものは、
二の次に過ぎないから。
「もっぺん言ってみろよ、芹那」
「落ち着きなよ、」
「言ってみろっつってんだよ!!」
静まり返った住宅街に、諒二の怒号が響く。
「『忘れちゃったの?』って聞いたの」
「…随分、ふざけたことを言うんだな」
「覚えてるんでしょう?」
「野暮なこと聞くな」
「じゃあ話は早いでしょ」
落ち着いた声音で言い放つ。
落ち着いたようで、悲哀を含んだその声で。
……諒二は、気づいただろうか。



