諒二は、狼二代目総長だった人でもある。
先代であるからして、彼は
棗のことも、勿論私が抱えてきた事情もほとんどすべて知っている。
でも、だから。
知っているからこそ。
諒二にだけは迷惑をかけたくないと思っていた。
巻き込みたくないと。
巻き込めば彼はきっと、私以上に大きな負の感情を背負ってしまうはずだ。
なのに。
───なのになんで、ここにいるの。
「そんなわけ無いでしょ」
「…」
「そこまで頭パッパラパーじゃないよ」
「…、」
「棗とさっき会って、話通じなそうだから殴っちゃった」
「…」
「今のうちに倉庫の前にでも捨ててくるよ」
「…ほんとに、」
「うん?」
「ほんとにそんだけ?」
諒二の言いたいことが、何となくわかった。
他に、
棗を送り届けることの他に、何か別の目的があるんじゃないのか。
諒二はきっとそう言いたいんだと思う。
それはたとえば、
「彼処に、───狼に戻るつもりなんじゃなくてか?」
私が白々しく
元鞘に戻ろうとしているのではないか。
ということ。
「ふざけないで」
「…芹那、」
「そんなつもり一切ない」
「…そっか」
「……そんな真似、出来るわけないでしょ」
───諒二は忘れた?
「忘れちゃったの?冴のこと」
「…っ、」
かっ、と諒二の瞳孔が開かれる。



