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「───芹那、」
我が家を50メートルほど先に捉え、
真っ先に見えたのは
「…ナツ?」
タバコ片手に、辛気臭く宇宙を仰ぐ諒二の横顔だった。
「お前、それ、ナツだろう」
「…諒二」
───“ナツ”。
それは紛れもなく、私の横で眠る棗を指す言葉。
…懐かしい。
『ナツ!』
『っおい!女みたいな名前で呼ぶなって言ってるだろ!』
『あはは、ごめんごめん』
自分のことを“ナツ”と呼ぶ仲間たちに、真っ赤になって怒っていたと思ったら
いつの間にか満更でもない顔をして。
そんな棗を見ることも
あの頃の私の、日常の一部だったことを思い出す。
「諒二、」
「待てお前、なんでナツと一緒?」
「…懲りないんだ、こいつらも私も」
「何年ぶりだよ、でかくなったなあ」
「…でしょ」
「…ん」
「…」
「…いらん心配なら、そう言ってくれ、
───戻るつもりか?“彼処”に」



