「…こうするしか、」
小さく呟く。
棗には聞こえていない。
もちろん、他の誰にも。
答える間もなく、私は私に問いかけてみる。
────本当に?
本当にこうするしかなかったの?
「…、わかんないよ……」
どうしようもなく苦しい。
身体の波長も、心の波長もめちゃくちゃで。
なんとか正当化しようとしたって無駄。
私自身、それを望んでいないから。
もし仮にこれが本当に完璧な答えだったのだとしても。
私には多分受け入れられない。
「…随分遠いとこまで来ちゃったな」
ぽつりと呟く。
そんな状況で棗をここに放置しておく訳にも
いかない、よね。
「…どこから来たの、あんた」
「…」
「私が殴ったんだけど。答えてよ」
「…」
「知ってる。“彼処”から来たんだもんね」
「…」
「…あーあ、厄介小僧め」
棗は多分もうしばらく起きられない。
ここには、他に人影もないのね。
皮肉なことに。
私は。
「…仕方ないか」
───棗を放っておけない。
「…、っ」
棗が起きてしまわないよう、静かに近づく。
「、重」
そして、また静かに肩に腕を回すと
家までの道のりを歩き出す。
結構な時間歩いていたのに、棗は一向に起きる気配すらない。
…ちょっと強く殴りすぎたのかも。
思わず棗の顔を覗き込むけれど、気持ちよさそうに目を閉じたままだ。



