───そんなに、泣かないで。 出て行って今にも彼を抱きしめてしまいそうになる衝動を、ぐっと堪える。 駄目なのだ。 今出ていったら。 たかが外れる。確実に。 そうして私が葛藤している間に 棗の声は着実に私へと近づいた。 「…やばいな」 それに反応するように木から出ようとすると、 ───ポキッ 微かなそれは 小さな音を、出した。 私が踏んだ細い枝。 その存在さえも今はただただ、憎らしい。