伝説に散った龍Ⅱ















どこか遠くへ。



彼等の、棗の眼から逃れるどこかへ。



足には多少の自信があった。



なにより、



走りながら拭う余裕もない涙を隠そうと必死で。



その思いを糧に公園を一つ、はしごした。



隣町の中央公園。



すぐ近くまで迫る棗の気配を感じながら公衆トイレへと逃げ込む。



それでもなんだか落ち着かなくて



よじ登った窓から飛び降り、道路沿いに植えられた植木の影へ。





























































「…っ、はあっ、はあ、」















───泣きたくて、仕方がなかった。



こうなることは想定内だった。彼等に会ってしまえば。



だから会いたくなかった。



走馬燈のように私の頭を走り抜けるものがある。



『思い出』だったのだ。



いいものも、悪いものも。



あいつらと過ごした日々は、なににも変え難かった。



だから余計、脳が彼等を思い出すことを拒んでいた。