伝説に散った龍Ⅱ

















「俺だけじゃねえよ、皆だって」



「うん」



「こんなん納得しねえよ!」



「うん」



「戻りてえって言えよ!!」


















揺れていた。



戻りたい。



戻れるものなら、私だって戻りたい。



長い間封じ込めていたはずの赤裸々な思いが
棗の声を聞く度により一層強くなっていく。





「…潮時なんだよ」



「…っ、んな言葉いらない!」



「棗」



「…そんな理由なら俺は帰らない」



「棗、」



「引きずってでも連れて帰る」



「…棗、それ以上は駄目」



「…だからなんで!」



「それ以上は本気で黙らせる」





────いくら相手あんたでも、容赦しない。





「セリナ、」





棗が、生唾を飲む音が聞こえて。



静寂の中、月明かりが私たちを照らし出すから



棗の視線に応えるように



まだ濡れている砂利を、わざと音を鳴らして踏んだ。





「セリナ、」





切なげな表情。



私の言葉が



棗のことを
狼のことを



そして、自分のことを傷つけている。



それは、今この瞬間も。