「さっきからセリナちゃんセリナちゃんうるせえが、残念ながら俺らはセリナちゃんとか死ぬほどどうでもいい」
「あ、そう。なら好都合。帰って」
「…あ?」
「…手、邪魔だよ」
至近距離で凄む男を気にもせず。
スマホから顔を上げた彼女は一言
「私の大事な時間を、どうして貴方たちに奪われなくちゃいけないの?」
その場の空気が、割れるような感覚。
気がつけば腰が浮いていた。
俺の掌は男の拳を受け止め
俺は見事、人生初のナンパに成功した。
「ーー龍」
「…あ?んだよてめえ横槍入れやがって」
「“黒龍”の“近藤”」
「…、は」
「これ以上まだ彼女に触れる?」
「…コン、ドウ」
「龍への叛逆とみなすよ」
「…っ、」
彼女から男たちを離して
小さく、そう呟けば
三人の中のリーダー格らしい一人が
行くぞ、と他二人に低く声をかける。
彼らは俺を振り返ることなく、
足早にその場を後にした。



