黒くも暖かい笑顔を見せる、
近藤の優しさが、心に染みた。何となく。
ずっと聞きたかったことがあって。
いや、彼相手にはそんなの幾つもあるんだけど。
…それは、伊織にも聞けなかったこと。
今聞いておこうと思った。
その返答次第で
一発、殴る準備をした。
ーー二人はどうやって出逢ったのか。
彼は、伊織のどの部分を決定打に
『彼女を守ろう』と決めたのか。
聞いておかなくてはならない。
二人の大恋愛を妨げる第一の関門は、この私なのだから。
「第一問」
「え?」
「伊織の好きなところを挙げなさい」
「え、ちょ」
「いくつも、とは言わない。寧ろ一つだけ」
「…唐突だね」
「当然でしょ。時間なんて与えたらあんたのペースに持ち込まれる」
あはは、と笑った近藤。
鈍く彼を睨みつける私に、平たく笑った近藤は
ぽつり、ぽつりと話し始めた。
抱きしめた思い出を、離してしまわないように。
丁寧に。



