観月のすぐ傍
もう一人、男が倒れていたが



セリナ曰く、そいつは放っておくべき相手。



手を貸すつもりか、哀れむつもりすらなかったが、何となく、本当に何となく振り返った。



…と言いつつ。



ある種期待のようなものに胸を弾ませていた。



そしてそれは



『セリナ』の痕跡への期待である。



































「蛇、な」





男の裾口から伸びる真っ黒な腕を、這うようにして掘られた刺青。



蛇だろうか。



男の顔面をよくよく見てみれば、鼻柱はありえない方向に捻じ曲がり、加えて前歯も二本欠けている。



しかしそれでいて、体を全体的にに見れば目立った外傷は見られない。



セリナの友人、ーー伊織ちゃんの方がよっぽど凄惨な姿をしていた。















































ーーそう。



それは紛れもなくアイツのやり方で。



俺の、求めていた痕跡だった。





「っ、はは」





乾いた嘲笑が口をつく。















































































『ーー雄大くん、っ』






どこからか、セリナの声が俺を呼ぶ。






その声音が






さっき会ったばかりの、円堂芹那のものなのか






はたまたあの頃のものなのか






今の俺には、見当もつかない。