「それ、俺を利用してないか?」
途端に、空気が固まった。
悠が真顔で、突拍子もないことを言ったから。
ひょっとして、悠。気づいたの?
私が不本意ながら言葉を絞り出していてる……ってことに。
「俺が勉強まあまあできるからって。二人とも俺のこと家庭教師代わりにしようって魂胆だな?」
そう言って、笑顔になる。
違った。
バレてない。
私が乗り気じゃないってこと、まだ、バレてない。
「……うん。いいよね?」
「仕方ねーな。面倒みてやるか」
これで、麻美の機嫌を損ねずに済む。
もう、あんなこと、されずに済むんだ。
「ありがとー! 碓氷くん!」
「おう」
「あ、それじゃあ。場所とか日付とか相談したいし。連絡先教えてくれるかなー?」
そうやって自然に連絡先を交換して、そのうち、二人でデートでも行こうって考えているんだろう。
抜かりないというか。打算的というか。
「あー、それなら。ひなと相談して」


