「おはよ、ひな」
背後から声をかけてきたのは、悠だ。
「昨日は、サンキューな」
いつもは今頃朝練をしている時間だよね。それも、テスト期間だからないということなのだろう。
「一週間も部活休みなんて身体がなまっちまうから。走ってきた」
「え、家から?」
たかが三駅――されど三駅。
何キロあるか正確にはわからないけれど、私だったら朝からその距離を徒歩なんて考えられない。
「だからジャージなんだね」
「そういうこと」
「元気すぎ」
「スポーツやりに来たからな、俺」
そりゃまあ、そうだけど。それでも勉強もできるんだもんな。
まさに文武両道。
昨日、うちのお母さんと盛り上がっちゃって、結構遅くまで喋っていたよね。
私は途中で部屋に行って勉強してたけどさ。
悠、お母さんの晩酌の相手なんてしちゃって。
ほんと、いつ勉強してるの?
それに。
(悠のお母さんの面倒みなくて大丈夫なのかな)
家庭の事情にどこまで踏み込んでいいものか、わからない。
鬱って、どんな感じなのかな。
「おはよー!」


