「それ、どういう……」


――ガチャ


勢いよく準備室の扉が開けられる。


「ひな!」
「悠……」


相当慌てて走ってきたようで、息が荒い。どこにいたんだろう。ひょっとしたら、もう駅の方まで行っちゃってた?


「おいコラ碓氷。ノックくらいしろ」
「栗原……まさかとは思うが……ひなに手え出したりなんて」


――!?


「な、なに言ってるの、悠」
「だってよ。こんなとこに連れ込んで……」
「連れ込まれてない! 一緒に来ただけ!」
「それを世間では連れ込まれたって、」
「もう、変なこと言わないで。先生、お邪魔しました」
「おう。二人とも気をつけてな」
「はい!」


行くよ、と悠を押して準備室から先に出す。

振り返った先生に、


「あ、先生。紅茶――」


『ご馳走様でした』


と、言おうとしたのに。


人差し指を、先生が、唇の前にかざして。


ナ イ シ ョ


そう、言われた気がして。


「どうした、ひな」
「……ううん。失礼、しました」
「また明日」


先生にここで紅茶をご馳走になったことは、先生と私だけの秘密になってしまったんだ。