「ビッチ」


体育の授業前、更衣室で着替えていると
肩をぶつけてきたナミからそう言われた。


「今度は藤ヶ谷くん? 男子に媚びるの、好きだね。うぶなフリしてさ。つるむの、イケメンだけだよねー」
「そんなつもりない。藤ヶ谷くんから話しかけてきてくれたんだよ」


私のことを心配していたのかは、ちょっとよくわからなかったけど。


「話しかけてー。寂しいよー、って。そんな顔して待ってたんでしょ」
「してない……!」
「それでー。昨日の夜ご飯は、なにをご馳走したの」
「どうしてそんなのナミに教えなきゃならないの」
「はあ!?」


ドン、と突き飛ばされて棚に頭をぶつけた。


「ちょっと。やりすぎだよ」そう言ったのは、サツキだ。


サツキは基本的に傍観者。見てるだけ。

それでも今のは、さすがに私がケガでもしたらマズいと思って止めてくれたのかも。


「別に。こんなやつ、どうなってもいいし。もう友達でもないんだから。いくら碓氷くんの幼なじみだからって、なんにも役に立たないなら要らないし」