先生のためになにかしたいと思えてならなかった。
「いや。宇崎は、まずは自分のこと決めなきゃな」
「……!」
「さらって、なんて言われて。本当にさらってきちまったが。それで本当によかったのか、今一度よく考えてくれ」
私が、先生にさらわれてよかったか……?
「宇崎は、あの子と違って自分の進む道を判断できる年だか。数年後には成人する。されるがままにいる必要ない。自分の意志で、選んで欲しい」
私の、意志。
そんなの。
「ここに、いたいです」
その選択以外、あるわけないじゃないですか。
「それでいいのか」
「それが、いいんです」
「たとえば。暫く家に帰れなくなってもか」
「はい」
「友達に会えなくても」
「はい」
「ここがどこか。知れなくても?」
そういえば、さっきの部屋も。
この部屋も。
窓が、ない。
「もし、宇崎がここから出たいなら。家に帰りたいなら。俺は車で君を送っていく。ただしここがどこかは絶対に教えないし、もう連れてくることもないだろう」
「え……」
「ここは、俺の秘密基地だから」


