「なにを?」
「くりりんの家」
――え?
「実は、前に見かけたときに尾行してさ。ここから、すごく近い」
「嘘……」
「ほんと。もう、帰ったかなー?」
「…………」
「行ってみる? せっかくそんなかわいい格好してるんだし」
会いたい。会いたくて、仕方ないよ。
でも。
「さすがに、押しかけたら迷惑だよ」
大丈夫。
まだ。正常な判断、できてる。
「じゃあ、偶然装うか」
(え……)
「違和感なく会えばいい」
「そんなこと、できるかな」
「できるさ。普通のマンションだから、そこにどっちかの知り合いがいて遊びにきてた帰りとか」
「無理矢理すぎないかな。藤ヶ谷くんと私が学校で仲良さげな雰囲気、皆無だし」
「いけるいけるー」
せっかく、いい子になろうとしてるのに。
「うまくいけば部屋の中に入れてもらえるかもよ」
藤ヶ谷くんが、そうさせてくれない。
なんてのは。
――ただの私の言い訳なのかもしれない。
「行ってみようよ」
「……うん」


