「お願い。先生に、言わないで」
「うん」
「みんなにも」
「うん。まあ僕、クラスに友達いないからなー。話す相手もいないよ?」


そりゃあ、藤ヶ谷くんって一匹狼っぽいけど。

話すとこんなにフレンドリーなのに。

どうしてクラスの誰ともつるまないの?


「僕が宮内麻美と実は親友で。ここでの話を曝露されたら。君はもっと居場所なくなるね」
「……え?」
「もっとズタズタにイジメられるねえ」
 

突然、崖の前に立たされたような気持ちになる。


「たとえ話だよ、ヒナコちゃん」
「……そう、だよね」


悪い冗談だよね。それが本当なら。

全然、笑えないし。


もう、本当に教室に一人も話し相手がいなくなる。


……そんなの、絶望的だよ。


「あー。ヤバイ。そんな、煽らないで」


――?


「さっきから。結構我慢してるんだよ、僕。にぶーいヒナコちゃんには伝わってないと思うけど。伝わらせないようにしてるんだけど。とりあえず、あんまり僕の前では怯えないで」
「……藤ヶ谷、くん?」
「いや、違うなあ。今のは僕が、悪い。わざと怯えるようなこと言った。見たくて。ヒナコちゃんの震えあがるところが」


藤ヶ谷くんが、両手で、自分の顔を覆っている。


もう、どんな表情をしているのか、全然わからない。


なんだか、様子が変だ。

さっきの、友達って感じの雰囲気じゃなくなった。


保健室に入った直後に感じたオーラがまた出ている。


「やっぱり君はイジメられ気質だね」