いつかバレることだと思っていた。
それでも。
「碓氷くん。必要なテキストって、数Ⅰかな。それとも数Aかな」
持っていなければないって言うんだけど。
どっちも持っているから会話が続行するわけで。
「数Ⅰ。ってなに名字で呼んでんの。他人行儀だな」
「ど、どうぞ」
「ひな？」
首を傾けて不思議そうに私を見ている
そこのド天然男子に告げる。
――ただちに教室から出ていってください。
でなきゃ、さっきから
女の子たち（主に同じグループの子）からの視線が、痛くて仕方ないのです。
「サンキュ。終わったらすぐ返しに来るな」
「い、いつでもいいよ。今日はもう終わったから」
「そーか？ なら帰りにお前の家――」
「じゃあね碓氷くん！」
「……？ おう」
さっさと出ていけこの鈍感王子。
