鬼だ。
悪魔だ。
目の前にいるのは、人間じゃ、ない。
「遊んであげてるんだからさ。もっと楽しそうにしたら?」
「反応うっすいね」
「もっと絶望してくれた方が盛り上がるね」
いつのまにか、傍観者のサツキも、笑っている。
なんで。
いやだ。
助けて。
「……仁依菜ちゃん……」
声にならない声で、すがった。
トイレのドアの方を向いて立っている仁依菜ちゃんの背中に向かって、囁いた。
「たすけて。仁依菜ちゃん」
すると――。
「傑作なんだけど」
ナミが、手を叩いて笑った。
「ムービーとっててよ。サツキ」
「オッケー」
ポケットから携帯取り出したサツキが、私にカメラを向けてくる。
「どうする? 脱がす?」
やめて。
「仁依菜、ちゃん……!」
こっち、向いてよ。
向かなくても、いいよ。
誰か、呼んできて。
助けて。
お願い――。
「脱がそうよ」


