両腕をナミに掴まれ。
制服のポケットから携帯を取り出すと麻美がロックナンバーを解除するから教えろと言ってきた。
(いやだ)
勝手に携帯、覗かないで。
「答えなかったら。仁依菜ぶつよ」
「え……」
「仁依菜も今日から標的だよ」
麻美につく仁依菜ちゃんのこと最低だって思うのに。
入学式のとき、声をかけてくれた天使のような仁依菜ちゃんが、やっぱり私の中にいて。
「……っ」
ロックナンバーを教えると。
「なにがメッセージ苦手よ。着歴もあるじゃん」
悠とのやり取りを見られた。人に携帯を好き勝手いじられるのは、こんなに気分が悪いものなのか。
(やめて。やめて。やめてやめてやめてやめて)
「ねえ。今から行くって何? うちは断れたのに。あのあと、会ってたの? うちのことバカにしてんの?」
「して、ない」
「なにしてたの?」
「っ、勉強……」
「嘘つき! 勉強なんか、してないんでしょ。カラダ使って縛ってるんでしょ。ウザコ。ほんとはインランなんだよね?」
「ちがうっ……」
「こんなものがあるから碓氷くんと繋がれるんだ」
――!
「だったら。いらないよね?」
麻美がトイレの個室に入っていく。
「やめ……」
こっちを振り返った麻美が、薄気味悪い笑みを浮かべた。
「ハイって言えよ。犬のクセに」


