うちにやってきた悠は、なぜか学校の鞄を持っていて。


「なにからやる?」
「……え?」
「俺がいればわからないところ、教えてもらえるって。言ってたろ」
「もしかして、私に勉強教えに来てくれたの?」
「それ以外になにがある」


約束放り出して帰ったことを怒ってるわけじゃなかった。

でも。

二人きりで勉強なんてしたって知られたら、また、麻美からなにを言われるか――。


「つか。用事ってなんだったの」


私を見ずに、鞄から筆記用具を出しながら問いかけてくる。


「友達と……仁依菜ちゃんと。ちょっと相談ごと」
「そっか」
「ごめんね。行けなくて」
「別に」
「どう、だった」
「どうって?」
「え……だから。麻美とのテスト勉強。はかどった?」


すると、悠がこっちを見てこう言った。


「はかどるもなにも。してないけど」