こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「酒井! 待ってくれ」

会社から出るまであと数歩というところでエレベーターホールから息を切らせた木崎課長が現れてぎょっとなった。メールを見てからすぐに飛んできたのだろう。私は立ち止まることなく急いでそのまままだ開ききっていない自動ドアを無理やりすり抜けて外に出た。すると、白い一台の高級車が目の前に停まって私の行く手を阻んだ。

「おい、乗れ!」

助手席が開き、運転席から顔をのぞかせていたのは最上さんだった。このままでは話したくもない相手に捕まってしまう。そう思った私は咄嗟に助手席に乗り込んで勢いよくドアを閉めた。それと同時に最上さんがアクセルを踏み、チラリと後ろを振り返ると途方に暮れた木崎さんがひとりエントランスの前で立ちすくんでいた。

「危なかったな」

まさに間一髪。