こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「ふぅん。やっぱりそうか」

木崎課長が立ち去った後、最上さんが意味深にニヤリとする。

やっぱりそうか。ってなに? まさか今ので木崎課長とのことバレるわけない……よね?

「お見苦しいところをすみませんでした。それに私、泣いてなんかいません」

すっかり乾いた目元でキッと見上げる。どうせ強がっているとかなんとか言われるのだろうと思いきや、最上さんはいきなりぶにっと私の頬を軽くつねった。

「いった! ひょっと! なにふるんへふはっ」

「そうだ、ここは会社だ。泣き顔なんて簡単に見せるもんじゃない」

小さい頃、泣き虫だった私によく父が“女が簡単に泣くもんじゃない”と言われたことをふと思い出した。だから辛いことがあっても、決して人前で泣いたことなんてなかったのに。不覚だ……。

「仕事が終わったら陽だまりに行くのか?」

つねられた頬をさする私に最上さんが笑顔なく尋ねる。

陽だまりとは、一般にも開放している社内のカフェテラスのことで、休み時間によく利用している場所だ。木崎課長に待っていると言われたけれど話なんかしたくなかった。

「行く必要ないだろ。行くか行かないかはお前の自由だ。無視しとけ」

「え?」

意外なことを言われて目が点になる。そんな私の頭にぽんっと軽く手を載せて、最上さんはその場を後にした。