「凛子……わかってくれ」
「会社で名前、呼ばないでください」
そんな甘い声で慰めようとするなんてずるい。異動になったことをきっかけに、もう彼との関係も年貢の納め時なのかもしれない。すっと木崎課長が私の頬に触れ、抱きしめようとした。私は反射的にその手を振り払う。誰が見ているかわからない社内で誤解されかねない行為はしない。そんなこと、彼もわかっているはずなのに。
「ここでこんな話するのもなんですけど……異動するのもちょうどいい機会ですから、私たち、もう終わりにしませんか? 辞令の件はわかりました」
「おい、終わりってなんだ」
いきなり私にそう言われて、木崎課長は驚いて目を見開く。そしてすぐに彼の眉間に皺が寄った。居た堪れなくて私はくるりと背を向ける。後ろから掴まれた腕を振りほどいて、私は勢いよく会議室を飛び出した。
最低だ。なにもかも……もうイヤ!
どうして私がコールセンターなんかに……!
少しでも私に情があるなら、守ってくれると思っていた。そんな考えは甘いのだろうか。
目頭が熱くなる。そして足早に廊下を歩き、角を曲がったその時だった。
「会社で名前、呼ばないでください」
そんな甘い声で慰めようとするなんてずるい。異動になったことをきっかけに、もう彼との関係も年貢の納め時なのかもしれない。すっと木崎課長が私の頬に触れ、抱きしめようとした。私は反射的にその手を振り払う。誰が見ているかわからない社内で誤解されかねない行為はしない。そんなこと、彼もわかっているはずなのに。
「ここでこんな話するのもなんですけど……異動するのもちょうどいい機会ですから、私たち、もう終わりにしませんか? 辞令の件はわかりました」
「おい、終わりってなんだ」
いきなり私にそう言われて、木崎課長は驚いて目を見開く。そしてすぐに彼の眉間に皺が寄った。居た堪れなくて私はくるりと背を向ける。後ろから掴まれた腕を振りほどいて、私は勢いよく会議室を飛び出した。
最低だ。なにもかも……もうイヤ!
どうして私がコールセンターなんかに……!
少しでも私に情があるなら、守ってくれると思っていた。そんな考えは甘いのだろうか。
目頭が熱くなる。そして足早に廊下を歩き、角を曲がったその時だった。



