「酒井凛子……そうか、お前はSAKAIの社長の娘だな?」
峰岸専務が徐に立ち上がると歩み寄ってきて、身動きの取れない私の手からスマホを奪い取った。
「返して!」
「そういうわけにもいかない。これに録音されているのは外部に聞かれたらまずい機密事項だからな」
何度も取り返そうと手を伸ばすけれど宙を虚しく掻くだけで、一八〇近い長身には到底届かない。
「証拠隠滅だ」
そう言うと、峰岸専務は縁廊下のすぐ真下に広がる池にまるでゴミでも捨てるかのようにそれを投げ入れた。ボチャンという水音に絶望を突きつけられる。
やっと、やっとここまで来たのに!
小春ちゃんにもほかの芸者さんにも協力してもらって、あと少しだったのに……!
肝心なところでドジを踏んでしまった自分を呪いたい。
ああ。最上さん……私、ごめんなさい。やっぱり私、役に立てなかったよ――。
彼の笑顔を思い出すとじわりと瞳が濡れるのがわかった。
放心したまま、瞬きを忘れて膝から崩れ落ちると同時に掴まれた腕が解放された。
峰岸専務が徐に立ち上がると歩み寄ってきて、身動きの取れない私の手からスマホを奪い取った。
「返して!」
「そういうわけにもいかない。これに録音されているのは外部に聞かれたらまずい機密事項だからな」
何度も取り返そうと手を伸ばすけれど宙を虚しく掻くだけで、一八〇近い長身には到底届かない。
「証拠隠滅だ」
そう言うと、峰岸専務は縁廊下のすぐ真下に広がる池にまるでゴミでも捨てるかのようにそれを投げ入れた。ボチャンという水音に絶望を突きつけられる。
やっと、やっとここまで来たのに!
小春ちゃんにもほかの芸者さんにも協力してもらって、あと少しだったのに……!
肝心なところでドジを踏んでしまった自分を呪いたい。
ああ。最上さん……私、ごめんなさい。やっぱり私、役に立てなかったよ――。
彼の笑顔を思い出すとじわりと瞳が濡れるのがわかった。
放心したまま、瞬きを忘れて膝から崩れ落ちると同時に掴まれた腕が解放された。



