こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

「菊乃と言ったか、お前、本職の芸者ではないな?」

「わ、私は……」

ここで正直に身元を明かしてしまおうか、けれどそれではなにもかもが水の泡だ。
だめ、ここで引き下がるわけにはいかない。せっかく掴んだ情報なんだから!

「それを渡しなさい」

峰岸専務が録音を続けるスマホに手を伸ばす。私はごくっと喉を鳴らして伸びる手よりも先にスマホをひったくるように掴んだ。

「これだけは絶対に渡せません!」

そう言い放つと、私は勢いよく立ちあがって部屋を出ようと重い着物を引きずりながら部屋を出ようとした。

「凛ちゃん!」

小春ちゃんが私を呼び止める。襖をあけて踏み出そうとしたそのとき、中根本部長が乱暴にスマホを持つ私の腕を掴んだ。

「こんな綺麗なお嬢さんがスパイごっこか? お前は一体……」

「ソニリアの酒井凛子です」

うっ血しそうなくらいの力で掴まれ顔をしかめる。私の名前を聞いて「なっ……」と眉を歪めて中根本部長の声が漏れた。