こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~

鳳凰亭に今夜八時。

そのことばかり考えて、今日はまったく仕事にならなかった。日が沈んで暗くなるたびに緊張で鼓動が早くなる。仕事を終えて私は会社の前でタクシーを拾い、銀座の鳳凰亭へと向かった。

タクシーの中で、学生のときにアルバイトをしていたときのことを少し思い出した。あのときはなかなか料理の名前や素材が覚えられなくて苦労した。メニューがさほど変わっていなければ、ちゃんと説明もできるはずだ。

大丈夫。ひとりだって、平気。

先ほどからうるさく鳴っている鼓動を押さえつけるように胸に手をあてる。

本当は怖かった。最上さんが一緒にいてくれたら……という思いが一瞬ちらついた。けれど、自分でなんとかすると啖呵を切った以上、やるしかない。ソニリアの上層部の酒席でどう動こうか、廊下の陰から様子を窺えるところはあったか、頭のなかでシミュレーションしていると、いつの間にか店の前にタクシーが到着した。