日本に帰ってきたら必ず行くという新宿のBarに連れてこられ、絵里奈はビールを注文した。

「お前、車だろ」

「大丈夫。後で秘書に迎えに来てもらうから、代わりに運転してもらう」

「まったく、社長になるとこうも偉くなるもんなのか……秘書も大変だな」

そう毒づいて、俺はジントニックをひとくち飲んだ。

「それでソニリアの内偵のことなんだけど、進捗状況を報告しようと思って」

アメリカで流行っている革製のバッグの中から書類をいくつか取り出した。

「こっちがソニリアの取引先のデータベース。それで、こっちが調査後のデータ」

エクセルで表にされた書類に目を通すと、やはり俺が思っていた通りの調査内容だった。
以前より、新規の取引先が格段に増えている。それにどこもソニリアが目をつけないような小規模な会社ばかりだ。それ以外にもいつ誰が契約し相手の会社の担当者は誰かなど、自社で調べるには時間がかかるような細かな情報まで記載されていた。